かつて横浜の中心として栄えた旧横浜市庁舎街区。この歴史ある場所に、単なるスクラップ&ビルドではなく「継承・再生・創造」をテーマとした大規模ミクストユース開発「BASEGATE横浜関内」が誕生した。
三井不動産株式会社様を代表企業とする事業者7社のコンソーシアムが主導するこの巨大プロジェクトに、フロンティアコンストラクション&パートナーズ株式会社(以下、FC&P)は、その事業推進メンバーの一員として初期段階から参画。
行政機関との協議、複雑な利害調整、コロナ禍による計画変更、建設コストの高騰──。数多くの課題が重なる中、総合マネジメント業務の推進支援を担いながら、実務の最前線を支え続けた。
参画したメンバーたちが、それぞれの専門領域を活かしながら黒子として伴走し続けた、6年間の軌跡を追う。
設計技術部門 設計技術第二グループ グループ長
CRE・PRE部門 プロジェクト推進グループ
常駐コンサルチーム プロフェッショナルリーダー
CRE・PRE部門 プロジェクト推進グループ 常駐コンサルチーム
CRE・PRE部門 プロジェクト推進グループ 常駐コンサルチーム
CRE・PRE部門 プロジェクト推進グループ 常駐コンサルチーム
FC&Pが「BASEGATE横浜関内」プロジェクトへ本格的に参画したのは、入札が終わり、具体的な企画や基本設計が動き始めた2020年春のことだった。
折しも当時は新型コロナウイルス感染症拡大の真っただ中。総勢20〜30名におよぶ大規模なコンソーシアムの会議さえも、画面越しのリモートワークで行われるという異例の状況だった。
参画当初から開業までプロジェクト全体にかかわってきた安藤氏は、「右も左もわからない中で、リモートのやり方もわからず、手探りのスタートでした。」と当時を振り返る。
さらに計画に影響したのが、隣接する横浜スタジアムで開催予定だった東京オリンピックの1年延期にともなうスケジュール変更。旧横浜市庁舎が大会の「プレスセンター」に指定されたために、大会閉幕まで計画に着手できなくなり、全体のスタートが8ヶ月も後ろ倒しになった。
しかし、チームはこれを前向きに捉える。初期からプロジェクト当初計画プランのブラッシュアップを担った曽根氏は、「それぞれ立場や求めるものが違う中で、どう合意形成していくかが重要でした。ずれ込んだ期間は、むしろ商品企画や設計をじっくりと練り直すための熟成期間に充てられました」と語る。
最終的なグランドオープンの時期という動かせない期限がある中、実質的に縮まった施工期間をチーム一丸となった緻密な工程管理でカバーし、予定通りの開業へと漕ぎ着ける強固な土台が、この時に築かれた。
本プロジェクトの大きなテーマとなったのが、単なる建替えではない「継承・再生・創造」という考え方だった。街区内には、建築家・村野藤吾氏が設計した旧横浜市庁舎行政棟が残されており、その歴史的価値を持つ要素をどのように新街区と調和させるかが問われていた。
有識者や行政機関との対話を重ねながら、既存タイルや階段の一部を保存活用。議会棟の天井照明はレプリカとして再現され、当時使われていた議員席の座面はホテル家具へ転用された。
さらに、屋上に設置されていた人間国宝作の「愛市の鐘」も外構へ移設・保存されている。
また、解体工事の途中では、地下から大正時代の旧々庁舎の遺構が非常に綺麗な状態で出土するという想定外の出来事もあった。
歴史的発見に沸く文化財課と、事業の工程を守りたい事業者側。双方の想いを受け止めながら、安藤氏らは実務的な調整役を担った。「『残したい』という想いだけでは成立しません。
実際に残す場合には、コスト、維持管理、法規、将来の運用リスクまで全てを客観的に整理し、誰もが納得できる落としどころを具体的に説明し、判断を求めていく必要がありました」と安藤氏は語る。
歴史を継承しながら、新たな価値を創出していく。BASEGATE横浜関内プロジェクトは、単なる建設事業ではなく、過去の記憶を未来へつなぐ都市再生への挑戦でもあった。
BASEGATE横浜関内プロジェクトでは、建物というハード単体を完成させるだけでなく、周辺エリアとのつながりや街の回遊性を生み出すソフト面の役割も重視されていた。その象徴のひとつが、旧市庁舎の記憶を感じられる要素を街区内にちりばめながら、人の流れを大通り公園や関内・関外エリアへ広げていく動線計画「継承の道」だ。コンソーシアム運営支援に奔走した沼舘氏は、「単一の施設を建てる建設業というより、街全体の賑わいや回遊性を意識した広い視野が求められる不動産事業的な感覚でした」と語る。
多様な事業者が関わる巨大プロジェクトだからこそ、日々の迅速な情報共有が成否を分ける。沼舘氏は運営支援として、膨大な議事録の作成や議決事項の取りまとめ、タイムリーな情報展開を実直に担い続けた。
マネジメント支援の統括・推進を担った新氏は、「次回会議までには正確な議事録が全員に共有される。そうした沼舘氏の迅速で確実な情報整理があったからこそ、多くの関係者が迷わず瞬時に意思決定を下し、事業を前に進められた」と振り返る。
関係者を密につなぎ合わせる地道な実務もまた、FC&Pが果たした大きな役割であった。
本プロジェクトでは、設計、施工、コスト管理だけでなく、土地契約調整、周辺対策、テナント工事調整など、多岐にわたる対応が求められた。
竣工約1年半前から参画し、主に商業エリアを担当した阿部氏は、「既存建物を活用する実務は大変な面も多かったです。設備計画は何度も変更が重なり、想定外の追加工事や価格高騰の壁にぶつかることもありました」と振り返る。
その中で求められたのは、単なる妥協点探しではなかった。
「各事業者の皆様が、『もうこれしか方法がない』と納得できる形を、何とか見つけていきました」と阿部氏。
また、大手組織の仕組みを知り尽くしたうえでプロジェクトに参画した曽根氏は、長期プロジェクトを支えるFC&Pの特徴について「最初から最後まで同じメンバーが継続して関われることが強み」と語る。
「過去の議論や経緯を理解したうえで、『あの時の協議はこうでしたよね』と整理しながら伴走し続けられたことが、プロジェクトの安定推進において大きな信頼に繋がったのでしょう」と曽根氏。
しかし、強みは一貫した継続性だけではない。さまざまなバックボーンを持つメンバーたちが、専門外といえる領域へも柔軟に適応し、マニュアルのない課題に対しても実直に突破口を開いていった。
この「一貫した継続性」と、専門領域に囚われず泥臭い実務をやり抜く「柔軟な対応力」の複合こそが、FC&Pが提供した固有の価値といえるだろう。
2026年3月19日、BASEGATE横浜関内は多くの関係者の尽力を経て、待望のグランドオープンを迎えた。しかし、メンバーにとってこれは完成ではなく、新たなスタート地点に過ぎない。
安藤氏は、「開業はひとつの大きな節目ではありますが、ゴールではないと感じています。この場所がこれからどのように街に愛され、どのような賑わいが生まれていくか。それによって初めて、私たちが注いできたマネジメントの価値が評価されると思っています」と語る。
本プロジェクトで培われた知見やマネジメント経験は、すでに次のフィールドへ広がっている。
沼舘氏は「横浜市 大通り公園1区〜3区リニューアル事業」のプロジェクトマネジメント業務を担当。また阿部氏も、横浜・上瀬谷で開催予定の「GREEN×EXPO 2027」に関わる新たな都市事業へ参画している。
さらに、安藤氏と曽根氏は、次なる大型プロジェクトである築地エリア開発へとフィールドを広げている。
「技術屋としてキャリアを始めた自分が、今は不動産事業や都市事業の世界に深く関わっています。この経験は大きな財産です」と安藤氏。
自分の決められた担当業務の枠(テリトリー)の中に収まって満足するのではなく、そこから一歩踏み出して未知の領域へアグレッシブにチャレンジしていく。FC&Pが大切にしてきたこの進取の精神は、未来の仲間たちと共に、さらなる舞台へと続いていくだろう。