Project Story 03

住まいのお手入れ
アドバイザー業務

マンション居住者様に向けた定期アフターサービス業務
Prologue
住まいのアドバイザーという、もうひとつのアフターサービス

新築マンションの鍵を受け取ったその瞬間から、居住者の暮らしは本格的に始まる。
慣れない設備や新しい内装材を前に、「どう扱えばいいのか分からない」という戸惑いの声も少なくない。
フロンティアコンストラクション&パートナーズ(以下、FC&P)が展開する「住まいのアドバイザー」は、そうした入居後の不安や疑問に応えるための訪問型サービスでマンションを販売するデベロッパーからFC&Pが受託し、アフターケアの一環として提供しているものだ。
提供内容は、設備機器の取り扱いやお手入れ方法の案内。SNSや動画サイトで情報があふれる一方で、実は正しい知識を得られる機会は限られている。強い洗剤や過剰な掃除ではなく、「住宅を傷めない、続けられる方法」を第三者の視点で伝えることで、高い満足度と信頼を得てきた。
住まいのアドバイザーは、居住者と住まいに長く寄り添う、もうひとつのアフターサービスとして進化を続けている。

Section 01
顧客の不安に寄り添う、専門窓口として始動

住まいのアドバイザー業務の本格的な立ち上げには、住宅の引き渡し後に感じる「サポートの空白」を埋める必要性が背景にあった。
購入前の営業フェーズでは手厚く案内され、モデルルームでの説明や内覧会も丁寧に行われる。だが、鍵を受け取り、実際に住み始めたあとに多くの居住者が感じるのは、初めての住宅設備に対する戸惑いや、ちょっとした疑問を誰に聞けばいいのかわからない不安だった。

ときに「電気がつかない」「鍵が開かない」といった初歩的な困りごとであっても、紙の案内を読んで自力で解決するのは難しい。そんなとき、現地に誰かがいて、すぐに話しかけられるだけで安心感が生まれる。
FC&Pはこの“空白の時間”に着目し、居住者にとって身近な相談窓口となる役割を担うことで、デベロッパーのアフターサービスをよりシームレスなものへと進化させてきた。もともとこのサービスは、早期対応を担う現場スタッフの声から育ってきたという経緯がある。内覧会や初期対応を通じて寄せられる「本当はこうしてほしい」という声を拾い上げ、FC&P社内で提案・改善を重ねる中で、徐々に現在のかたちへと整備された。マニュアル化が難しい対応だからこそ、現場スタッフの観察力と柔軟な判断が活かされる業務となっている。
「営業さんや施工会社の人に聞くのは気が引けるけれど、私たちになら気軽に話してもらえる。そこが、この仕事の一番の価値だと思っています」と語るのは、FC&Pで長くアドバイザー業務を担ってきた河原氏だ。
単なる設備説明にとどまらず、不安を先回りして解消し、施工・管理・居住者の三者をなめらかにつなぐ。住まいのアドバイザー業務は、CS(顧客満足度)向上にとどまらず、アフターサービス全体の質的向上を目的として立ち上げられた取り組みである。

Section 02
日常に入り込み、暮らしの目線で支える

住まいのアドバイザーの活動は、引き渡し直後からおおむね6ヶ月程度のあいだに段階的に行われる。まず、引き渡しから約2ヶ月間は「早々期」として、マンションにアドバイザーが常駐。現地で居住者のちょっとした困りごとに即時対応する体制を整えている。
その後、3ヶ月から6ヶ月のあいだには、デベロッパーが実施する定期点検のタイミングにあわせて各住戸をお手入れアドバイザーが訪問 。

給気口フィルターやレンジフード、水回り設備などを対象に、お手入れの実演を交えながら30分ほど案内を行う。
使うのは、強い洗剤や特殊な道具ではない。ホームセンターや100円ショップなどで手軽に購入できる中性洗剤や道具を用い、「キレイを保つ方法」を伝えていく。SNSなどにあふれる情報のなかには、逆に素材を傷めてしまうような掃除法も少なくない。河原氏は「新築だからこそ、“やりすぎないお手入れ ”を伝えることが大事なんです」と話す。
居住者の理解度や関心度に応じては、一部のお手入れをスタッフが代行する場面もある。バルコニーや排水口の掃除、側溝の処理など、「自分でやるには少し不安」と感じる箇所については、負担をかけない距離感でサポートを行う。「『そんなに汚れてたんだ』と驚かれることもありますし、自分でやるきっかけになったと言っていただけるのはうれしいですね」と河原氏。
一人ひとりの暮らしに合わせた、無理のないアドバイス。現場での判断力と心配りが、この業務の専門性を支えている。

Section 03
顧客満足度と建物保全に貢献する仕組み

お手入れアドバイザーによる訪問は、お手入れ方法を伝えるだけでなく、建物そのものの寿命維持や資産価値の保全にもつながっている。現地で直接顔を合わせ、適切なお手入れ方法を伝えることで、日々の管理状態が向上し、トラブルの芽を早期に摘むことができる。
「排水の流れが悪い場合など、設備不具合とは言い切れないことも多いんです。こちらから『掃除が大事ですよ』と伝えることで、原因の共有と予防の両方につながる。そういったことは、デベロッパーさんからは言いづらいこともあると思うので、私たちが代弁できるのは大きいですね」と河原氏は話す。
こうした伝え方の工夫も、顧客満足度を実質的に押し上げる要因のひとつだ。居住者に寄り添いながら、言葉を選んで状況を伝えるアドバイザーの存在は、デベロッパーのアフターサービスを陰で支えている。
また、訪問時の内容はすべて記録され、社内での情報共有に活用されている。誰が担当しても一貫した対応ができるよう、属人化を避けた体制づくりが進んでいることも、この業務の持続性を高めている。

Section 04
AIには真似できない、人の力で生む信頼

住まいのアドバイザーの役割において、もっとも大切なのは“人だからこそできること”を見極める感覚だ。
例えば、言葉にならない違和感や、ちょっとした表情の揺らぎ。設備の不具合とは呼べないような微細な困りごとにも、居住者の不安がにじむ瞬間がある。アドバイザーは、そうしたサインを見逃さずにすくい上げる観察力と感受性を求められる。
「『なにか違う気がする』という声にならない感覚にこそ、対応のヒントが隠れていることも多いんです。

マニュアル通りにはいかないからこそ、現場経験が大事だと思います」と河原氏は語る。
丁寧な所作、表情、言葉の選び方──そうした“人ならでは”のふるまいが信頼を生み、安心感へとつながる。AIやデジタルツールでは代替しきれない、人の感覚が活きる領域だ。
現場に立つ人の“人間力”こそが、FC&Pの住まいのアドバイザー業務の土台を支えている。

Section 05
“2年の壁”を越えて──見えてきた可能性

住まいのアドバイザー業務の取り組みは、社内にもポジティブな影響を与えている。CS(顧客満足度)を軸とした活動が社内文化に浸透し、部門を越えた情報連携やサポート体制の強化が進んでいるのだ。
また、こうした動きに伴い、業務の標準化やマニュアル整備、ナレッジ共有も本格化。属人的になりがちな現場対応を仕組み化することで、品質を保ちつつ、継続的なサービス体制の構築が進められている。
アドバイザー業務が担うのは、主に引き渡しから2年間のサポート。だがその期間が過ぎた後、居住者から「また来てほしい」「ずっと相談できると安心」といった声が寄せられることも少なくない。
「アフターサービス保証期間の2年間が終わってしまうと、私たちとしても正直“手が届かなくなる”もどかしさがあります。もっと継続的にお役に立てる仕組みがあったら……という思いは常にあります」と河原氏は語る。
FC&Pでは現在、そうした声を受け止め、2年目以降のフェーズで提供できる新たな業務のかたちを模索している。
暮らしに寄り添うこの業務から生まれる気づきやつながりは、建物の価値を守るだけでなく、企業としてのサービスの質や信頼性を育てていく。CSを起点に、次の事業へ。FC&Pは今、その可能性をひとつずつ形にしようとしている。